情報大航海時代に挑む相手はグーグルだけではない

経済産業省が昨年末に立ち上げた、検索エンジンに関する研究会「ITによる『情報大航海時代』の情報利用を考える研究会」(事務局:富士通総研)での議論をもとに、今年6月にコンソーシアムが発足した。企業や大学など56団体が参加している。三菱総研が事務局となって、来年度からスタートする。グーグル覇権に挑む国産プロジェクトで、マルチメディア検索エンジンの開発基盤をオープンソースで作る―としている。来年度の予算は50億円を要求しており、今後3年間で世界に問える技術開発を目指すという。10月のCEATECでは眞鍋かをりさんを起用して「Google八分、知ってますか」と、「情報大航海時代」の産学連携プロジェクトをアピールした。大手電機企業と同じぐらい広いブースに、富士通やソフトバンクBB、シャープ、東京大学や早稲田大学など10団体が技術を展示した。

これがメディアで流れている情報である。「グーグル覇権に挑む・・・」という文言と「Google八分・・・」というメッセージが気になった。世界第二位の経済を誇る日本の国(官僚)が、「一企業に挑む」というのはどういう了見なのか理解に苦しむ。しかも「一企業から村八分にあっている・・・」というのは被害者意識的発言であり、一国の官僚が言うべきことではないだろう。了見が狭いと批判されても仕方がないと思う。

50億円もの税金を使って、一体どんな経済・社会・文化的効果を期待しているのかが分からない。少なくとも「研究会」の議事録と公表資料を読んだ範囲ではどこにも書かれていないようだ。誰のため、なぜ、何を行うと、どんな効果が出るのかの論点がいまだ明確になっていないと思った。これについてはここでは深入りしない。

いま、この記事を書く契機となったのは、「世界第4位の利用者数を誇る百度が、来年に日本語版サービスを開始する」というニュースである。百度のCEO、Robin Liは北京大学卒業後アメリカに渡り、検索エンジン開発に携わった経験から、中国市場に眼をつけ、中国語検索に照準を合わせた。そして、中国に戻ってビジネスを起業する決断をしたということである。

この話から連想するのは、日本においても、成功した企業、Yahoo!Japan、楽天、Livedoor、いずれも経営者がアメリカから日本市場を見てビジネスを開発してきたということである。市場の中からではなく、市場の外からその市場を冷徹に分析して取るべき技術開発とビジネスモデルを考えるのが時代の要請であろう。

そうした視点から中国市場を見るべきであると思う。「情報大航海時代」と謳うなら、日本の市場だけでなく、たとえば中国市場も視野にいれた議論もあってしかるべきではないか。今後の市場を考えると英語圏よりも中国市場のほうが大きく伸びる。まだGoogle一社の売上にも及ばないが遠くない将来、中国の検索利用者数が世界最大になるのは誰しもが認めるところである。同じ税金を使って国産検索エンジンを開発するなら狭い日本市場だけではなく、これからの成長市場である中国市場も視野に入れて、取るべき進路を検討すべきであろう。そうでないと「情報大航海時代の羅針盤」にはなれない。ゴーストシップになる危険がある。

これから3年をかけて世界に通用する国産検索エンジン開発というのは腑に落ちない。中国には、1億2千万人のインターネットユーザ(2007年6月時点)がいて、その90%が百度を利用しているという。その百度が日本に進出してくる。挑むべき相手はGoogleだけではない。

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